🌱「私ってダメ…」から抜け出す!ABCDE理論で感情をマネジメントし、キャリアを拓く

「頭ではわかっているのに、つい感情的になってしまう」 「ネガティブな気持ちに振り回されて、なかなか行動できない」

もしあなたが今、そう感じて立ち止まっているとしたら、それは決してあなたが弱いからではありません。私たちの感情は、時にキャリアの大きな壁として立ちはだかることがあります。

前回、「『どうせ私なんて…』といった『思考のクセ』」が私たちのキャリアを制限する可能性についてお話ししました。この「思考」と密接に結びついているのが「感情」です。

今回は、心理学者のアルバート・エリスが提唱した「ABCDE理論」という強力なフレームワークを使って、私たちが感情にどう向き合い、それをポジティブな力に変えてキャリアを拓くヒントをお届けします。


なぜ、感情に振り回されてしまうのか?〜ABCDE理論で感情の仕組みを知る〜

私たちは、何か困った出来事が起きると、その出来事が直接、感情を引き起こすと考えがちです。

例えば、「プレゼンがうまくいかなかった(出来事)→ 落ち込んだ(感情)」というように。

しかし、ABCDE理論では、この間に私たちの「信念(B:Belief)」が介在すると考えます。

  • A:Activating Event(出来事)
    • 例:プレゼンがうまくいかなかった
  • B:Belief(信念・思い込み)
    • 例:「プレゼンは完璧でなければならない」「失敗する私は価値がない」
  • C:Consequence(結果・感情や行動)
    • 例:ひどく落ち込む、やる気を失う、次の挑戦を避ける

つまり、出来事(A)が直接感情(C)を生むのではなく、その出来事をどう捉えるか、どんな信念(B)を持っているかが、私たちの感情や行動(C)を決めている、という考え方です。

キャリアにおいて、この「B(信念)」が非合理的であるほど、「私ってダメ…」といったネガティブな感情に繋がりやすくなります。


ABCDE理論で感情をマネジメントし、キャリアを拓く3つの実践ステップ

では、非合理な信念を見つけ、より建設的な感情と行動を生み出すために、ABCDE理論をどう活用すれば良いのでしょうか。

ステップ1:「A(出来事)」と「C(結果)」を特定する

まずは、あなたが「私ってダメ…」と感じたり、ネガティブな感情に振り回されたりした具体的な出来事(A)と、その時に起こった感情や行動(C)を明確にしてみましょう。

  • A(出来事)例: 上司から自分の企画が却下された。
  • C(結果・感情と行動)例: ひどく落ち込んでしまった。もう新しい企画を出すのが怖いと感じた。

具体的に書き出すことで、状況を客観視しやすくなります。

ステップ2:「B(信念)」を見つけ、「D(反駁)」で検証する

次に、ステップ1で特定した出来事(A)と感情・行動(C)の間で、あなたがどんな信念(B)を持っていたかを探ります。そして、その信念が本当に合理的か、「D(反駁)」という視点から検証していきます。

  • 「B(信念)」を探す問いかけ例:
    • 「なぜ私はそんなに落ち込んだのだろう?その時、心の中で何を考えていた?」
    • 「企画が却下されたことで、自分はどんな人間だと思った?」
    • 例: 「企画が却下されたのは、私が能力がないからだ」「完璧な企画でないと意味がない」
  • 「D(反駁)」で検証する問いかけ例:
    • 「その信念を裏付ける確かな証拠はあるか?」
      • 例:「却下されたのは、本当に私の能力不足だけが原因?他に会社の方針変更や、予算の問題はなかったか?」
    • 「その信念に反する証拠はないか?」
      • 例:「以前、別の企画は評価されたことがあったな」「上司は改善点も教えてくれた」
    • 「その信念を持ち続けることで、どんなメリットとデメリットがあるか?」
      • 例:デメリット「やる気をなくし、次の挑戦ができない」
    • 「もっと健康的で、現実的な別の見方はできないか?」
      • 例:「企画が却下されるのは、成長の機会だ」「今回の学びを次に活かそう」

この「D(反駁)」のプロセスが、ネガティブな「B(信念)」を変える上で最も重要です。

ステップ3:「E(効果)」として新しい感情・行動を生み出す

反駁(D)を通じて、より現実的で建設的な新しい信念を育むことで、あなたの感情(C)と行動に効果(E)が現れます。

  • 例: A(企画が却下された)→ B(「能力がない」)→ D(「却下理由は他にもある」「学びの機会だ」)→ E(落ち込みはするが、すぐに改善点を検討し、次に向けて前向きに取り組めるようになった)

このABCDEのサイクルを意識的に繰り返すことで、あなたは感情に振り回されることなく、主体的にキャリアをデザインできるようになります。


キャリア支援者として、あなたの「感情のマネジメント」をサポート

「思考のクセ」や「非合理な信念」は、長年の習慣によって身についたものです。一人でそれに気づき、変えていくことは、簡単ではないと感じるかもしれません。

私たちキャリアコンサルタントは、あなたの心の声に耳を傾け、あなたのA(出来事)B(信念)、C(感情・行動)を客観的に特定するお手伝いをします。そして、共にD(反駁)を実践し、より健康的で前向きな「E(効果)」へと繋がるよう、具体的な練習を伴走いたします。

感情を上手にマネジメントすることは、単に心が楽になるだけでなく、あなたのキャリアの可能性を大きく広げます。「私ってダメ…」という思い込みを手放し、あなたらしい未来を拓いていきましょう。


キャリアの小径 Vol.19

【あなたの「思考」と「感情」のクセを知り、未来を拓くお手伝いをします】

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