🌱 相手の靴を履いて歩いてみる。本当の繋がりを作る「共感」の力
アドラー心理学において、対人関係のゴールは「共同体感覚(=ここにいていい、誰かの役に立っているという実感)」です。そのゴールへ向かうための大切な橋渡しとなるのが、「共感」という姿勢です。
今回は、アドラーが定義した「共感」の真意と、それが職場の人間関係にどのような変化をもたらすのかを具体的に紐解きます。
アドラーが考える「共感」の定義
アドラーは、共感をこう表現しました。
「他者の目で見、他者の耳で聞き、他者の心で感じること」
これは、単に相手の話に「そうだね」と合わせることではありません。 最大のポイントは、「自分の価値観や正義感、経験則を一旦横に置いておく」という覚悟にあります。
私たちはつい、相手の話を聴きながら「それは違うな」「自分ならこうするのに」と、自分の色眼鏡で裁いてしまいがちです。しかし共感とは、その色眼鏡を外し、相手が履いている「人生という名の靴」を自分も履いてみて、その靴で歩いた時に感じる痛みや、見えてくる景色を丸ごと共有しようとする試みなのです。
仕事の場面での「共感」:具体例で考える
職場で「ミスをした部下」や「非協力的な同僚」を前にしたとき、私たちはどう振る舞いがちでしょうか。
例:納期に遅れてしまった部下への対応
- 【自分の目線(正論)で裁く場合】 「なぜ遅れたんだ? 社会人として納期厳守は当たり前だろう。次はどう改善するつもりだ?」 → 正論ですが、部下は「責められた」と感じ、防衛本能から言い訳を探したり、自信を失って心を閉ざしたりします。
- 【アドラー流の共感(相手の靴を履く)場合】 「納期に間に合わなくて、君自身も焦りや申し訳なさを感じているのかもしれないね。何か想定外のトラブルや、一人で抱え込んでしまった事情があったのかな?」 → 自分の判断(納期を守れなかった悪)を一旦脇に置き、「相手が見ている不安や重圧の景色」を一緒に見ようとします。
共感がもたらす変化
- 相手に起こる変化: 「理解された」という安心感が、失敗を隠す「恐怖」を消し、誠実に現状を報告して改善しようとする「勇気」に変わります。
- 自分に起こる変化: 「だらしない部下」という敵対的な見方から、「困りごとを抱えた仲間」という見方に変わります。すると、怒りの感情に振り回されず、共通の目的(仕事の完遂)に向けて冷静に協力できるようになります。
「共感」は、自分を消すことではない
自分の価値観を横に置くことは、自分を捨てることではありません。 相手の世界を旅して、その背景にある「目的」を理解し、また自分の世界に戻ってくる。この行き来があるからこそ、私たちは「課題の分離」を保ちながらも、温かい繋がりを持ち続けることができます。
「相手は今、こういう景色を見ているから、あんな態度をとっているんだな」と深く理解した上で、「では、仲間として自分にできる協力は何だろう?」と考える。この順番こそが、職場の不条理さえも乗り越えていく鍵となります。
キャリア支援者として、あなたの「世界」に耳を傾けます
キャリアの悩みは、時に自分一人では抱えきれないほど複雑です。 「誰も自分の状況をわかってくれない」と感じる時は、職場がとても冷たく、孤独な場所に思えてしまうでしょう。
キャリアコンサルティングでは、私があなたの目になり、耳になり、心になって、あなたの見ている景色を丁寧に共有していきます。 あなたが「自分は一人ではない」と感じ、再び自分の足で歩き出すための勇気を取り戻せるよう、まずはあなたの靴の履き心地を、隣で一緒に感じさせてください。
キャリアの小径 Vol.68
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